「燃料・潤滑技術の最前線」-Forefront of Technologies for Fuels and Lubrication-

欧州各国では,今後十数年以内にディーゼル車やガソリン車の販売を停止する方針を打ち出しており,国内外で自動車の電動化が急速に進んでいます.一方で,内燃機関でも新燃料や熱損失低減技術の適用により,Well to Wheel で電動化と同等,もしくはそれ以上のCO2 排出量の低減が期待できます.本号は,わが国における燃料・潤滑油に関する最新技術を紹介いたします.

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日本国内における自動車用燃料に関する動向

2009年に成立したエネルギー供給構造高度化法は,バイオ燃料の利用拡大と,重質油分解装置の装備率の向上を石油業界に求めた. 本稿ではまず石油製品の需要動向と燃料品質規格を概説し,当センターでの自動車・燃料研究を紹介しながら,上述の法律の自動車用燃料品質への影響と日本における自動車用燃料の今後について考察する.

自動変速機の性能向上に寄与する潤滑油の影響

変速機の効率向上のために,変速機油に対する要求特性は年々厳しくなってきている.本稿ではATFの低粘度化,シャダー防止性の向上,HEV/EVモータ用潤滑油の冷却性向上の検討結果について解説する.

代替燃料の最新動向

代替燃料は,主体とする燃料の必要性や不足という課題が改善されると,やがて利用されなくなるということがこれまの歴史であった.これに対し近年の代替燃料の研究開発およびその利用は,燃料の多様化やCO2排出削減をモチベーションとしており,今後もそうした方向性において代替燃料の普及が進められると考える.

接触分解法による新たなバイオディーゼル燃料の製造とその利用

筆者らは,固体触媒を用いて多様な油脂トリグリセリドを改質し,高品質の炭化水素系ディーゼル燃料HiBD(High Quality Bio-Diesel)を合成する技術の開発を進めている.本稿では,HiBDの製造法と物理的,化学な性質,およびディーゼルエンジンに対する燃料特性のあらましを概説する.

バイオマス由来の水素製造技術

バイオマス(未利用間伐材や畜産廃棄物,食品廃棄物,下水汚泥)の熱分解ガスと2段PSA精製により高純度水素並びにCO2を回収する方法について,過去15年間の研究開発経緯を記した.開発の結果,バイオマス由来の水素製造可能性と,回収したCO2を利活用することによりネガティブ・カーボン・エミッションの可能性を見出した.

太陽光応答型光触媒を用いた水からの水素製造

光触媒や光電極を利用した太陽光照射下での水分解による水素製造は,クリーンな水素製造法として注目を集めている.本稿では可視光応答型の光触媒および光電極を用いた水分解系構築に関する近年の発展について述べる.

下水バイオガス原料による水素創エネ技術の開発

本開発にて,下水消化ガス原料から燃料電池自動車用高純度水素を製造できることを実証した.2年間の耐久試験においても,能力低下等のトラブルは一切なく,安定的に再生可能エネルギー由来の水素製造が可能である.

バイオディーゼル燃料の酸化劣化特性

脂肪酸メチルエステル(FAME)は世界で最も良く用いられるバイオディーゼル燃料であるが,燃料噴射系において懸念点が存在する.特に,インジェクタ内部デポジット(IDID)はエンジン性能に影響する重要な課題である.我々はFAME混合燃料のIDID形成性を説明する新しい燃料性状値を,ランシマット試験を改良することで見出した.

新規バイオ燃料候補であるフラン類の紹介

液体燃料として利用できる可能性のあるフラン類が,バイオマスを原料として製造できることが2007年に発表され,それ以降,フラン類の製造研究や燃焼研究が活発に行われてきた.本記事では,新たなバイオ燃料候補であるフラン類の着火燃焼特性に関して,我々が進めている研究も含め紹介する.

水素キャリアの研究開発動向

我が国のエネルギー政策は大きく見直されている.持続可能な社会を築くため,再生可能エネルギーと水素による電力貯蔵が注目されている,さらに水素や未利用エネルギーを貯蔵・輸送する方策としてエネルギーキャリアの技術開発が急がれる.本報では,水素キャリア製造及び利用技術の研究開発動向について解説する.

LCA視点によるバイオマス燃料の検討

バイオマスガス化による燃料製造パスについて,内燃機関を対象とする場合と燃料電池車を対象とする場合について,LCAを行った.特に,内燃機関については,製造及び利用までを想定した検討を行い,また,水素を主体とする燃料電池については,不純物除去や所内動力軽減策を提案し,それに対する環境影響についても議論した.

添加剤の最新の動向

地球環境の保存から,省資源・省エネルギーが求められている.潤滑油においては摩擦抵抗の低減が必須であり,具体的な方法として低粘度化が有力な手段として用いられている.低粘度化に対する添加剤の最新動向について述べる.

なじみ・焼付きを解析可能なメソトライボロジーシミュレータの開発

なじみ・焼付きを解析するには,粗さの変化,膜生成と破壊,摩耗粉の挙動,表面温度といった,表面の変化を精密に予測する必要がある.マクロおよびナノシミュレーションで計算する油膜厚みや物性値をパラメータとして用いることで,メソ領域の面性状変化予測に特化したシミュレータを開発したので,解説する.

水素ガス中における材料の摩擦・摩耗・潤滑

燃料電池自動車のための水素ガスインフラ等で使用されるトライボ要素材料の摩擦,摩耗,潤滑について概説する.金属,樹脂,コーティング,セラミクスの水素中におけるトライボ特性と,トライボ界面での諸プロセスを紹介する.重要な点は,水素自体の作用,微量の水分や酸素の作用,移着膜形成,高圧水素の作用などである.

平滑2層構造固体潤滑被膜ピストンの開発

条痕加工されたピストンスカートの固体潤滑被膜の上に,電着塗装することで平滑面を形成する塗装技術を開発した. 一般に,ピストンスカート表面の粗さが小さいほど,摩擦損失は小さくなる. この平滑2層構造固体潤滑被膜を有するピストンは,ピストンスカートとシリンダーボア間に生じる摩擦損失の大きな部分を占める流体潤滑域の摩擦損失を大幅に低減し,従来のSFLピストンと比べて30%のFMEP(摩擦平均有効圧力)低減に寄与した.

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