車両開発におけるデジタルエンジニアリング
-Digital Engineering for Vehicle Development-

近年の製品開発は環境対応、安全安心、ユニバーサルデザインなど、今まで以上に多様で複雑な要求に対応していく必要があります。クルマの車体開発においても、燃費向上、車体剛性向上による運転性能向上、衝突時の安全性能向上などと同時に、生産性・品質なども整備することが必要です。本号では、クルマの車体開発における様々な分野で活用されている、デジタルエンジニアリングシステムの技術や取り組みを幅広く紹介します。

このページについて

  • 本ページでは、会誌特集記事の抄録をご覧になれます。
  • 実際の記事については、会員の方はお手元の会誌をご覧ください。
    会員以外の方は「本会出版案内」にてお買い求め頂けます。

自動車開発におけるデジタルエンジニアリング

自動車開発においてCAEは1980年代半ばから実務で使われ始め、特に開発のデジタル化が推進された2000年以降より急拡大し、今では開発に必要不可欠なツールとなっている。CAEの活用方法も、実験不具合時のトラブルシューティングから始まり、実車実験の代替として開発プロセスに組み込まれ、その後車両の最適化や機能・性能を計画するためのツールとなり、更には認証にとその用途を拡大してきた。ここでは主に車両性能のCAEを題材として、その活用方法を切り口に、これまでの流れと現在の動向、そして将来の展望について解説する。

自動車製造分野におけるデジタルツインの活用

Industry 4.0に代表される次世代の設計生産革新による生産性向上の中核として、デジタルツインが注目されている。本稿では特に、自動車製造分野においてIndustry 4.0時代を見据えた課題とその解決に向けたデジタルツインの活用について述べる。その中で、シーメンスの提案するBOP(Bill of Process)をベースとした製造のデジタルツインのユースケースを紹介する。

1DCAE の目指すところとその実現方法

上流設計の重要性について述べるとともに、ものづくりの変遷を通して今やるべきことを明確にする。これらを受けて、1DCAEの目的と考え方、目指すところ、方法と効果について紹介する。最後に自動車開発における1DCAEについて私見を述べる。

標準化部材を主要構成とした車体設計手法の研究

ゲームチェンジのような時代変化が車体開発手法に影響すると想定する。そのような変化に対応するため、車体アーキテクチャの新たな視点を提案する。パイプ部材とジョイントを組み合わせた標準化部材を主要構成とした車体構造とその設計手法を考案。さらに、CFRP製車体フレームを試作し、標準化と軽量化の関係性を考察した。

衝突シミュレーションのデータマイニングによる衝突性能予測と知識発見

衝突安全性能の評価でのCAE活用は一般的となっている。大規模演算技術の向上によりハードウエアコストが下がったことで、モデル規模が大きい衝突CAEにおいても大量な計算が可能となった。しかしながら、大量に実行された衝突CAEの結果分析は、CAE技術者の経験に委ねられていると言える。本稿は、データマイニングの技術が、衝突CAEにおけて、設計にどのような知識を与えうるかを明らかにする。次元圧縮手法を用いて、衝突経過に関する俯瞰的特徴量の抽出を行う。

ソリッド要素を用いた溶接継手の疲労解析
─モデリングの効率化と解析精度向上について─

シェル要素によるモデリングが難しい狭い溶接間隔や板材と鋳物の溶接、特殊な始終端部形状溶接継手などについて、ソリッド要素と有効切欠き応力法による評価手法があるが、FEモデルのファイルサイズと計算時間の増大を招く。そこで粗いメッシュによるソリッドモデルを用いた新しい評価方法について検討を行った。

アーク溶接プロセス中の溶融金属流動の粒子法シミュレーション

本稿では、特にアーク溶接における溶融池内部の熱流動現象や溶滴移行現象を簡便にシミュレートできると期待される粒子法について解説し、これまでに得られている数値シミュレーション結果を紹介しながら粒子法における速度データの取扱いに関する留意点についても述べる。

粒子法を用いた炭素繊維強化熱可塑性プラスチックのプレス成形のシミュレーション

炭素繊維強化熱可塑性プラスチック (CFRTP) は成型加工性や機械特性に優れている。CFRTPの成形加工においては、樹脂中の繊維の分布や配向に依存した流動解析が必要である。そこで、粒子法を用いて繊維が流動に与える影響を粘性の異方性によってモデル化する方法を提案する。

トポロジー手法を用いた車体構造の最適化

薄板で構成されている自動車車体に対して、ソリッド要素による設計空間を車体に組み込みこんだトポロジー手法による部品形状の最適化について解説する。また、要求特性に対し最適化対象を効率的に残存できる解析プロセスを応用したトポロジー手法によるスポット溶接位置や構造用接合剤位置の最適化を解説する。

荷重伝達Ustar(U*)計算を用いた車体構造の適正化

自動車車体の軽量化と剛性の背反打破には、材料革新だけでなく、構造合理化が重要である。そのため、構造内部における荷重伝達現象を可視化した上で、理想に導くための構造適正化技術を研究している。本報告では、荷重伝達経路を定量・可視化するUstar(*)計算の思想・原理および、指標U*を用いた構造適正化事例を紹介する。

二輪車フレーム耐久性開発のための疲労解析技術

二輪車フレームの耐久性予測は従来の解析技術の発展型になるが、時々刻々変化する入力による組合せ応力を考慮する必要がある。本稿では、主要な骨格部材である溶接継手、アルミダイキャスト、熱可塑性樹脂を対象に、疲労試験による支配的な破壊要因の分析と汎用の疲労解析ソフトを用いて耐久性予測の検証を行った。

高強度薄板金属材料の破断予測シミュレーションに関する研究

自動車の燃費向上に向けた自動車車体の軽量化と衝突安全性確保を達成するための材料の高強度化・薄肉化が進むなか、設計段階で衝突時の材料の割れや部材の破断を数値解析的に予測することが重要となっている。本研究では、2種類の高張力鋼板を対象に機械的特性の違いが部材破断に及ぼす影響について考察を行った。

切削シミュレーションによるデータマイニング事例

切屑形状や切削抵抗値の評価を行う切削シミュレーション技術も近年のハードウェア環境の技術向上に伴い新しい利用方法が提案されるようになってきている。本報では切削シミュレーション結果をデータマイニングすることで新しい加工知見の発見に取組んだ事例を紹介する。

プレス成形シミュレーションを活用したボデー精度予測の取組み

人馬一体の軽量・高剛性ボディーを実現するため、精度・成形難度の高い高張力鋼板の生産技術開発に取り組み続けている。高張力鋼板の使用率の増加に伴い、ボディー精度・品質の造り込みがより難しくなる。そこで、プレス部品から車体アッセンブリー領域までをCAEでつなぎ、量産準備を実機と机上で効率よく行うボディー精度・品質向上の取り組みについて紹介する。

自動車排気系部品のスピニング加工での不具合発生要因のCAE 成形解析

排気系部品のスピニング加工について成形シミュレーションを開発した。その結果をフェライト系SUS鋼材での実機加工実験と比較検証した。シミュレーションでは加工後の板厚分布のみならず形状不良についても精度の良い再現が得られ、実機の不具合事象の予測や対策に有効に活用できると考えられる。

溶接部破断予測FEM 解析モデルの応用

応力三軸度の影響を考慮した相当塑性ひずみを破断限界値にした破断予測FEM解析モデルを開発した。本解析モデルをレーザ溶接継手の引張試験に応用し、継手強度と破断形態を精度良く予測できることを確認した。本技術の活用により負荷モードが異なるレーザ溶接部の破断過程の解明及び高精度な破断予測が可能となった。

このページの先頭へ