次世代の自動車に求められる「音」と「振動」技術の最前線

「音」と「振動」は人間の感覚に直接作用し,現代に至るまで快適さと不快さの両面を生み出してきました.自動車においても,静粛性が評価される一方で「静かすぎて歩行者に気づかれない」といった課題への対応が求められてきました.本特集号では,これらの課題を鑑みて,次世代の自動車に向けた最新の「音」と「振動」にまつわる幅広い研究をご紹介しました.読者の皆様にとって本特集が新たな刺激となり,「ちょっと感覚が研ぎ澄まされた」と思っていただければ幸いです.

このページについて

  • 本ページでは、会誌特集記事の抄録または記事タイトルをご覧になれます。
  • 実際の記事については、会員の方は会員マイページログイン後、電子版会誌をご覧ください。

<技術の窓>ポスト・モータリゼーションの街路設計

これからの自動車に求められる「音」と「振動」技術とそれを支えるNV技術者育成

DX/GX時代に求められる自動車のNV性能とそれを実現するNV技術とそれを支えるNV技術者の育成までを2024年度の振動騒音部門委員会フォーラム「2050年を見据えた音振・自動車・人づくり」で発表した内容を元にまとめました.まず顧客要求に基づくNV性能について,次に環境・社会要請に基づくNV技術,最後に人財育成ついて示しました.

バイオニックデザインを使ったBEVにおける熱マネ効率向上技術

電気自動車における課題の一つに、騒音性能の改善があります。マーレは自然界に着想を得たバイオニックデザインを用いて、HVACおよびフロントエンドクーリングモジュールに使用される冷却ファンの効率向上とNV低減に取り組みました。このアプローチでは、最新のAI技術を活用し、エンジニアリングの負荷を最小限に抑えました。

路面性状を考慮したタイヤパターンノイズ予測

CAEを用いてタイヤパターンノイズ予測を行い、路面凹凸および吸音特性の影響を検討した。凹凸路面の再現により気柱共鳴音の予測精度が向上し、吸音特性の導入で実験との誤差は1%以内となった。今後は市販タイヤのような複雑なパターン形状にも予測対象を展開し、より現実的な騒音予測モデルの構築を目指す。

車両空調への有孔パネル吸音構造の導入

自動車の電動化に伴い,電費向上やキャビンのリビング化のため,HVACには更なる小型化と静粛性の両立求められる.本研究では孔あきパネルを用いた吸音構造をHVAC内部へ適用することで,HVACの体格を変えず騒音を低減する手法を検討した.また,本手法を実際のHVAC製品に適用し,騒音低減効果を確認したため紹介する.

CVT 搭載AWD 車を支えるこもり音低減技術の構築

CVT搭載4輪駆動車にトーショナルダンパーを適用するための車両試験とCAEを組合わせた手法を紹介する.プロペラシャフトへの最適配置により,回転アンバランスによる振動を悪化させずに駆動系ねじれ共振に伴うNVH性能を 向上させた.更に後輪駆動力設定の自由度が高まりAWD性能も向上させた.

自動車車体の振動特性を制御する質量配置最適化

車体制振性を向上する方策のひとつに,ホワイトボディの振動特性のコントロールが考えられる.本記事では,ホワイトボディの質量分布を変更することによる振動特性への影響を論じる.質量配置を最適化した車体は,足回りからの振動入力に対するルーフパネル振動レベルが,変更前と比較し4.2dB低下した.

金属製の板ばねを用いた防振機構

電気自動車において,低温環境下で駆動される補機による車内外の騒音を低減するためには,防振機構が不可欠である.従来の防振ゴムは低温で硬化し,防振効果が低下する.一方,金属製の板ばねは低温でも柔軟性を保ち,安定した防振効果が得られる.本報では,金属製の板ばねを適用した防振機構の設計方法について述べる.

完全自動運転車の車室内デザインに関する一考察:マルチモーダルな全身振動が乗り心地および動揺病に与える影響

完全自動運転車の車室内デザインに関する基礎的検討として,ドライビングシミュレータを用い,前景の有無が乗り心地および動揺病に及ぼす影響を調査した.その結果,都市部と郊外で前方視界が乗員の快適性に与える影響が異なり,走行環境に応じた視界調整が乗り心地向上および動揺病抑制に有効である可能性が示唆された.

EV時代のサウンドデザイン
─インタラクティブサウンドによる運転体験の再構築

電気自動車(EV)時代における車両サウンドの新たな設計アプローチを紹介する. 従来のエンジン音が失われた車内環境において,サウンドを広義でのインターフェースとして再定義する試みを,複合刺激下での走行音の官能評価が可能なドライビングシミュレータ環境を活用した音響設計の事例を通じて論じる.

命がけで横断する視覚障害者への音による歩行安全支援の開発

視覚障害者への音による歩行安全支援として、AIによる接近通報音検知、小型モビリティ向けユニバーサル接近音開発、音で学ぶ交通安全教室の3つの取り組みを紹介する。静音化が進むモビリティ社会において、音を介した歩行者との新たなコミュニケーションのあり方を提案し、誰もが安心して移動できる社会を実現する。

<ホットトピックス>インピーダンス計測を用いたEV駆動用バッテリの性能評価

EV駆動用バッテリの電圧とインピーダンスを、EVの急速充電口から直接計測する手法について、原理と検証結果を報告する。EVを安心して長期間使用し、電池の価値を最大限に活かした循環型社会を実現させるために、本手法を通じた物理量に基づく電池状態把握および管理の手法を提案する。

<ホットトピックス>汎化精度の高い機械学習による運転者の注視点推定

先行研究において運転者の注視点推定のために,運転者の顔画像から得られる情報を入力とした機械学習による計測手法を開発した.しかし,その性能評価は実験参加者1名のみによるものであり,汎化精度については未検討であった.本研究では11名の実験参加者データを用いて汎化精度の高いモデルを開発した.

<ホットトピックス>ヤヌス型グラフェンナノリボン:炭素磁石の自動車技術への応用可能性

ヤヌス型グラフェンナノリボン(JGNR)の合成に成功し、炭素磁石の実現に向けた新たな道を拓いた。軽量・レアアースフリーでありながら高密度スピン配列を実現し、将来的なモーター・量子センサー応用への可能性を示す。

<ホットトピックス>環境に配慮したダイカスト技術の有効性

現在、ダイカストは自動車の軽量化ニーズに加え、製造過程を含む環境低減化の取組みや価格競争力がより一層求められている。一方、サイクルタイムの短縮は、消費電力量の削減や生産の高効率化が期待出来るため、今後ますます重要となっていく。それら環境負荷低減要素を取入れた製法の有効性について調査したので報告する。

<ホットトピックス>ミドリムシ接着剤
- ミドリムシが生み出した,自動車用構造材料のバイオベース接着剤

ミドリムシが産生する多糖と脂肪酸から、アルミニウム片に対して高い接着性(引張せん断強度 30 MPa)と易解体性を特徴とする、新たなバイオベース接着剤を開発した。この接着強度は、代表的な自動車構造材用接着剤である石油由来のエポキシ系接着剤に匹敵し、従来のバイオベース接着剤の接着強度を上回る値である。

<ホットトピックス>車両開発のシミュレーションにおけるAIを活用した3Dサロゲートモデルの可能性

近年、深層学習を活用した3Dサロゲートモデルの車両開発への適用が進んでいる。本稿では、車両開発シミュレーションの変遷を概観し、現時点の事例として樹脂流動解析に関する取組を紹介する。さらに、Vフローにおける3つ領域ごとの課題を整理し、今後の技術的展望と将来のサロゲートモデル像について考察する。

<超の世界>交代磁性体という新概念
─次世代磁気記録を拓く鍵

<スポットライト>空間を運ぶクルマ“Robo-Shop”

<標準化活動レポート>車両サイバーセキュリティに関する標準化活動

​<学生フォーミュラの日々 そして 今>熱中できる夢を持って壁を乗り越えよう!

このページの先頭へ