電動車両用モータ・インバータ・バッテリの先進技術

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カーボンニュートラルに向けた電動化とパワーエレクトロニクス

トヨタ自動車ではそれぞれの地域において地域のエネルギー事情やお客様の利便性を考慮しつつ、CO₂排出量を削減する「サステナブル&プラクティカル」な電動車両としてBEV,HEV,PHEV,FCEV等の商品を市場に投入してきた。本稿では、それぞれのシステムに対して開発した最新の車両電動化システムおよびその電力変換ユニットについて紹介する。

EV用モータの解析-FEAの基礎と活用事例-

本稿では、電気自動車用モータの研究開発に用いられている有限要素法解析について、その計算原理と応用事例について述べる。まず、有限要素法の計算原理をガラーキン法に基づいて説明する。次に、有限要素法解析の応用事例として、トルクリプルと損失低減を両立する形状最適化と回転子段スキューの効果の検討について紹介する。

密閉冷却構造を用いた小型高性能モータの開発

カーボンニュートラルの実現に向けた電動化が進む中、サスティナブルな社会との両立に向けては、駆動用モータには高効率であることはもちろん、材料の使用量低減も求められる。著者らは、これらを達成するためにモータ冷却手法を抜本的に見直し、大幅な小型化と従来同等のトルク/出力・効率を実現したモータを開発した。

HEV用モータトランスアクスルの小型軽量化・低損失化・低騒音化技術

トヨタは「カーボンニュートラル」の実現に向けて、電動車のフルラインアップ展開を進めており、これまで培ってきたHEVの技術開発も更に加速し推進している。 本稿では、HEVの重要コンポーネントであるモータトランスアクスルの小型化・低損失化・低騒音化の技術について紹介する。

電動システムの小型化を実現する高周速モータの開発

電動システムで最も大きな体格を有するモータには小型・高出力化が求められ、近年、従来より高速で回転し、ギアで減速しトルクを増大することでモータを小型化するアプローチが検討されている。本稿では、高回転速度化に対応したモータを提案し、実機試験によって成立性を検証した結果を述べる。

高出力密度パワーコントロールユニット(PCU)の開発

ホンダ・アーキテクチャーを適用した搭載汎用性の高いC、Dセグメント向けパワーコントロールユニット(PCU)を新規開発した。幅広い電圧に対応した昇圧器、12Vコンバータを内蔵し小容量化と高出力を達成した技術の紹介をする。

インバータの小型・高性能化に貢献する三菱電機の自動車用パワーモジュールについて

当社は1997年にxEV用パワーモジュールの量産を開始して以降、20年以上の市場実績を培ってきた。また、2015年にはインバータユニットの更なる小型・高性能化を狙った車載用パワーモジュール「J1シリーズ」とJ1シリーズ専用のドライバーICを製品化。J1シリーズの採用例として、インバータの軽量化(従来比約2kg)を実現している。

軽EV の長距離移動を実現するバッテリ冷却と急速充電制御の最適化

近年、EVでの長距離移動を実現する為に大容量のバッテリ開発が進められているが、新型日産サクラでは、手頃な軽自動車という車両コンセプトの観点から大容量化は行わず、新開発のバッテリ冷却システムとそれに適した急速充電制御を採用した。これらのバッテリ熱マネージメント設計により、長距離移動を実現した。

車載用バッテリーの発熱・伝熱シミュレーション技術

電動車に搭載される駆動用リチウムイオン電池(LIB)の発熱・温度挙動予測は、電動車開発および電池開発の両面において重要である。本稿では市販EV用LIBを用いて充放電時の発熱および伝熱モデルの構築と実測値との比較検証について、さらに、次世代電池として期待される全固体LIBの温度シミュレーション例について述べる。

<Hot Topics>新型 高効率1.5L 3気筒 可変圧縮比エンジンのクランクシャフト形状最適化による燃焼騒音の改善

カーボンニュートラルへの取り組みから、ダウンサイジング・熱効率向上といった燃費アイテムの採用が必須となるが、各アイテムはこもり音、高周波数異音、気流音といった音振課題のため、付加的デバイスで対策を行っている。本稿では、メカニズムを見直し、付加的デバイスを用いることなく静粛性向上を行ったので報告する。

<Hot Topics>ミラーによる視野分割型単眼ステレオカメラの研究

車両と人が共存する安全安心な社会に向けて、車両を自動で制御・運用する先進運転支援システムの普及の促進には、廉価なカメラシステムが望まれる。本研究では、単眼カメラの視野を姿勢の異なる2枚の反射ミラーで分割し、廉価に立体視を実現する手法を検討した。試作機は距離30mを誤差12%で測定できることを実証した。

<Hot Topics>風洞試験を効率化するための可変空力デバイスの開発

現在の風洞試験では、形状変更と空力値測定を交互に繰り返し、目標性能を満たす形状の探索を行っている。遠隔操作で形状変更する装置を車両に搭載し、形状変更のために風路に人や必要機材が入ることなく作業が出来れば、試験は風を止めることなく連続的に行うことが可能となる。これにより限られた時間内での試験数を増加させ、目標性能達成の確度を上げることができる。本研究では、遠隔操作が可能なFRストレイキとRRスポイラの形状可変装置を開発した。モックアップに搭載し風洞により動作確認を行い、従来と同時間内で10倍の試験数に増加できることを確認した。

<Hot Topics>SolarEVシティー構想推進への期待と課題

2050年カーボンニュートラルを実現するには、経済効率が高くスケールアップが可能な脱炭素化手法が必要になる。これには、都市レベルで、屋根上太陽光発電とEVを蓄電池として限活用した「SolarEVシティー構想」が大きな可能性を秘める。将来、ますますコストの安くなる屋根上PVとEVをリンクし、安価でカーボンフリーの電気を市中で十分活用できるシステムを構築することで、都市の脱炭素化を加速させる。今後、EVの普及と共に、屋根上PVとリンクしたV2H(vehicle to home)、V2B(vehicle to building)システムの導入を進め、できるだけ多くのEVオーナーに十分なメリットを提供していけるかが課題である。

<Hot Topics>花王が稼働へ、永久磁石を活用した最先端の化粧品生産システムの全容

ダウンタイムの短い効率的な多品種少量生産と省人化を両立する生産技術について紹介する。磁力で永久磁石の板を浮遊させ、6軸方向に自由に制御することのできるリニア技術を活用したセル生産システムの概要、優れた特徴、導入した場合の効果、実装に伴う課題や技術者の所感について解説する。

<Hot Topics>月面環境に適応するSLAM自動運転要素技術の開発

建設機械による施工作業を自動化するためには、自車の位置・姿勢を把握して自動運転する必要がある。地上では GNSSを基礎とした測位技術を利用することが多いが、月面では別の手段を用意する必要がある。LiDAR-SLAMとランドマークSLAMを組み合わせた自己位置推定方法を開発し、月面への適用可能性をシミュレーション評価するものである。