異材接合と適材適所によるモビリティのマルチマテリアル化

このページについて

  • 本ページでは、会誌特集記事の抄録または記事タイトルをご覧になれます。
  • 実際の記事については、会員の方はお手元の会誌をご覧ください。

自動車の材料選択に向けてのLCA

自動車軽量化のLCAに影響を与える重要な6要素は、生涯走行距離、二次削減重量、燃料削減値、材料代替率、リサイクル効果、生産立地である。リサイクル効果の評価方法により選択される材料が変わり得るため確立が望まれる。インフラや消費者行動により、評価の前提条件が変わり、結果も変わり得ることに留意が必要である。

自動車におけるマルチマテリアル化の実態と展望

2050年のカーボンニュートラルに向け、各国のCO₂規制強化や電動車両の増加などの動向に対応して自動車のマルチマテリアル化が進んでいる。今回、その背景、各国・各地域のマルチマテリアル車体の実体と今後の展望として新構造材料技術研究組合が開発した材料・技術とその実用化検討の結果について解説する。

マルチマテリアル異材接合と接合部の性能評価・予測

自動車車体軽量化の必要性から車体のマルチマテリアル化が指向されている。車体構造のマルチマテル化のためには、異種材料の信頼性の高い接合技術の確立が必要となる。マルチマテリアル構造のための異材接合技術の現状および異材接合継手の力学的性能を担保するための接合部の性能評価・予測手法について紹介する。

金属と樹脂の界面力学と特異応力場の強さに基づく新しい接着強度評価法

現状の試験方法では、本来一義的に決まるべき接着強度が、接着層の厚みや長さなどに依存して異なるのに対して、ISSFによる評価はそれらに依存せず、本来の強度を合理的に評価できる。ISSFを求めるには、簡便な2次元FEM解析が十分であることや、標準問題を同じFEMメッシュで解くことで、比較的容易に解析できることを説明した。

メタルフローを利用した新たな異材接合技術(摩擦アンカー接合)

摩擦アンカー接合は、先端が球面形状の接合ツールを下板の鋼まで押し込んだ際に上板のアルミ合金中に下板からなる鋼突起が形成され接合強度(特に十字引張強度)が向上することを特徴としている。本解説では合金化溶融亜鉛めっき鋼(GA鋼)に適用した際の問題点とその解決案についても紹介する。

車載用クラッド材料

クラッド材料は、複数の機能を併せもたせることができる複合材料である。クラッド材料の用途は幅広く、電気自動車用途では溶接性と電気伝導性が要求されるリチウムイオン電池用負極リード材や、低熱膨張特性と高熱伝導性が要求されるパワーデバイス用放熱材に使用されている。本稿ではクラッド材料の特長を解説する。

マルチプロパティデザインの多芯押出しによる実現

部材の性能を改善するためにマルチマテリアルデザインが採用されている。さらなる最適化のために要求された特性を有する材料を創製するマルチプロパティデザインを提案した。部材の寸法を決定した後に、その部材に要求される材料特性が決定される。そしてその材料特性を有する部材を創製する。多芯線押出しによるマルチプロパティデザインの実現性を検討した。 Al, Fe と Cu 芯材を Cu シースに挿入することでビレットを作製した。挿入する各材料種の芯材の数を変えることで、密度、降伏強度、電気抵抗率が制御された。測定された特性値は、複合則による予測値と一致することが明らかとなった。

高信頼性と易解体性を兼ね備えた鋼とアルミニウムの間接レーザ接合技術の開発

軽量化を実現するためマルチマテリアル車体構造が実用化されているが、異材接合は課題のひとつである。近年、ライフサイクルアセスメントの観点から材料のリサイクルやリユースが求められており、分解できる異材接合法のニーズが高まると予想される。このような背景から、我々はコールドスプレー皮膜を中間層として利用したレーザ異材接合法を開発した。本報では、開発した接合法の継手強度および熱処理による継手の分解挙動について報告する。

樹脂を活用したマルチマテリアル構造による超ハイテンエネルギー吸収部品の圧壊性能と振動特性の向上

車体衝突時に変形してエネルギー吸収する骨格部品について、少量樹脂を超ハイテン部品と薄鋼板パッチで挟んだマルチマテリアル構造を開発した。本構造により変形時の母材破断が回避でき、エネルギー吸収が大幅に向上するため軽量化が可能となる。また高剛性化により振動特性も向上するためBEV骨格への適用が期待される。

構造用接着剤を活用した接合技術

従来は、ボデー全体剛性を向上させることで動的性能(操縦安定性)向上を図ってきた。しかし、更なる軽量化、マルチマテリアル構造を見据え、操縦安定性と質感を両立していくためには軽量高剛性制振ボデーの開発が必要である。本稿では剛性と減衰性能を両立した高減衰接着剤を開発し、質感の高い軽量高剛性制振ボデーを実現した。

<Hot Topics>乗員頭部揺動を抑制するヘッドレストによる車酔いの低減

自動運転車を含む乗員の車酔いを低減するため、乗員頭部動を抑制する後頭骨支持ヘッドレスト(OBS)を開発した。実走評価の結果、OBSの使用により車酔いの評点が40%以上低下することを確認した。更に、リクライニング角を増した着座姿勢とOBSとを組み合わせることで、車酔いを約1/3に低減できることを示した。

<Hot Topics>長距離・高解像距離計測が可能な手のひらサイズLiDAR

自動運転車の実現にあたっては、レベル4以上の安全・確実な自動運転プログラムを立ち上げるために、長距離(200m)かつ高画質な深度センサーが不可欠である。本稿では、高性能で手のひらサイズのLiDARを実現するための2つの必須技術、高電圧/低電圧ハイブリッドトランジスタで構成されるアクティブクエンチング(AQ)-SIPMとデジタルSiPM特性補償(DSCC)回路について紹介する。 ハイブリッド AQ 回路により高い PDE を確保しながら画素領域を縮小した高画素密度2D-SiPMアレイ、および、受光レンズと受光ユニットの小型化により、手のひらサイズで高解像度の手のひらサイズLiDARを実現した。 DSCC は、外部コンポーネントを使用せずにオンチップの半導体プロセスと温度依存による特性変動を補償することで、高い耐環境性能の LiDAR 実現に貢献する。 これらの技術により、受光ユニットを世界最小サイズの64ccに小型化し、機械式に匹敵する測距性能を備えた合計350ccサイズのLiDARを実現した。

<Hot Topics>船舶のGHG削減策としての風力推進

現在GHG問題が喫緊の課題となっているが、代替燃料候補の水素などいずれも石油と比べエネルギー密度が低く、ライフサイクルで評価するとエネルギーを必要とする。風力は外洋では障害物がなく強く吹くことから、風力利用が見直され近代化され実装も進んでいる。風力利用のメカニズムから最近の様々な取り組みを紹介する。

<Hot Topics>コンパクトシティと次世代交通システム

人口減少社会におけるコンパクトシティ政策の意義を示し、その実現に向けた都市政策を解説した。特に交通と土地利用の関係から、コンパクトシティへと誘導する次世代交通の役割を示した。後半では、政策事例として宇都宮市を取り上げて、コンパクト化政策とLRT導入について紹介し、今後の展開と展望について述べた。

<Hot Topics>炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)UDテープを用いた組紐・プレス工程による立体構造成形

炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)の一方向(UD)テープを用いて組紐チューブを作成する手法の概略を説明し、パイプの機械的性質に影響する製紐条件(組糸の角度、軸糸の役割、カバーファクタ)やプレス条件(プレス温度、プレス圧)についての検討結果を報告する。併せて本手法の応用例の一部を紹介する。

<Hot Topics>自動車業界におけるAI活用,およびその展望

自動車業界においてAI活用といえば、自動運転が主となっている。しかし、実際は幅広い活用の可能性がある。その例として、生産性向上、ドライバ体験向上、MaaSなどにおける活用方法を紹介し、その展望を述べる。