社会の変容を見据えて
Looking ahead : The social transformation

「100年に1度の変革期」を迎えている自動車業界においても、新型コロナウイルス「コロナショック」によるウィズコロナ、アフターコロナへの対応力が問われています。本号は、大きな社会変容を見据えて将来を展望するため、人文・社会、法・経済、人間・医学など、各分野の最前線で活躍されている専門の方々に、現状と今後の社会変化を判り易く解説頂き,自動車技術に限らず広い視野で将来を展望する特集としました。

このページについて

  • 本ページでは、会誌特集記事の抄録をご覧になれます。
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<座談会>
社会の変容を見据えて

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、大きな社会変動のうねりの年となった2020年.大きな社会変容を見据えて、各専門分野の方々を交え、それぞれの視点から、現状と今後の社会変化について座談会形式で語っていただいた。

多様性と包摂性の世界へ─ポスト・コロナの生き心地のよい社会

2020年に入って、世界は大きな危機に直面した。新型コロナウィルスが、全世界で爆発的な感染拡大を引き起こした。課題を背負った私たちの世界を「持続可能な幸福社会」とするために、「多様性、包摂性、公正性」が重要な条件であることを、コロナ禍の影響もふまえて、筆者が2020年6月に実施した調査も参照しつつ、検討する。

ICT時代における実空間移動の価値とモビリティ革命

ICTの発展によりサイバー活動が活発化する中、2020年に起きたパンデミックによる移動の制限は、あらためて移動の価値を認識させることになった。本論文は、フィジカルな移動を伴う実空間活動と、ICT利用によるサイバー活動の効用と費用を詳細に検討するとともに、現在起きつつある道路交通のCASE革命への含意について論じている。

自動運転に対する受容的態度とは:リスク・ベネフィット認知に焦点を当てた調査からの示唆

本稿では、自動運転への態度を、認知・評価・行動意図に関する諸変数のネットワークとして概念化し、リスク・ベネフィット認知の役割について考察する。調査研究からは、低リスク認知や高ベネフィット認知がポジティブな評価につながらない可能性も示唆され、丁寧な情報提供と共創的な議論の場が求められる。

自動運転の安全性を担保する法制度─近時の状況を踏まえて

自動運転を実現する技術の公道での利用は、近く許可されることが見込まれる。その前に、いくつかの基本問題の解決が必要である。それは第1に運転者の概念、第2に運行設計領域(ODD)の概念、第3に、ジレンマ状況(トロリー問題)の解決である。第1に、運転者の概念は、ジュネーブ及びウイーン条約の趣旨と、無人運行を可能にする最新の技術を踏まえて解釈されなければならない。第2に、ODDの概念は、レベル4とレベル2を分ける際の基準として解釈されなければならない。レベル3はレベル4とレベル2の複合体なのである。第3に、トロリー問題は、行為功利主義と義務論という、相対立する観点からの理解を踏まえて検討がなされるべきである。

経済学から見た自動運転普及の論点:ネットワーク外部性の視点から

本稿では、自動運転の普及について経済学の視点から考察している。渋滞緩和や事故率低下などは、社会全体としては大きな便益であるが、必ずしも利用者のみに帰属する便益ではない。自動運転の普及初期段階では、自動運転車両利用者にこうした便益を還元する仕組みも検討の余地がある。

自動運転をめぐる法規制と法的責任の変容

ついに自動運転の実用化に向けた法改正が実現し、いよいよ本格的に自動運転車両の市場投入が始まる。本稿では、これまでの法整備の過程を振り返り,今後の法的課題と未来予測を提示したい。合わせて、AIの役割増大と責任の帰属について若干の試論を紹介する。

医療におけるAI技術と医療に特有の制度・規制

人工知能(AI)技術を用いる医療機器・医療システムに関する我が国の規制制度、ガイダンスにつき解説した。機械学習アルゴリズムを用いる医療機器プログラムは2020年11月現在で19品目が承認されている。研究開発及び評価におけるデータ管理体制、市販後学習に伴う性能変化に対応して薬機法が改正された。

人工知能とモビリティ

人工知能がモビリティに対して貢献できるのは画像認識などさまざまなことがあるが、ここではその一例として配車システムを紹介する。これは客が移動したいときに適切な移動手段を人工知能が提供するというものである。路線バスよりも便利でタクシーよりも安い公共交通の手段としてSAVSの開発と運用を行なっており、その概要を述べる。

新しい安全の定義としなやかな現場力

現在の安全マネジメントは生産性やサービスを無視して失敗を減らすことのみに集中しがちである。しかし、安全は仕事の目的ではない。レジリエンスエンジニアリングは安全の新しい定義であるセーフティIIを提唱した。それは「うまくいくことが可能な限り多いこと」と定義されている。これに対し、伝統的な安全の見方は「うまくいかないことが可能な限り少ないこと」である。本論文では、レジリエンスエンジニアリングに基づく安全マネジメントの考え方を紹介したうえで、現場第一線にセーフティIIと、内部および外部の変動に対してレジリエントに対処する能力を訓練する実践的試みを紹介する。

<HOT Topics>
無線多機能ホルダシステムによる切削加工モニタリング事例

切削加工の良否を決める重要な物理現象として、切削力、切削温度、振動が挙げられる。山本金属製作所は、各パラメータそれぞれを計測するセンサと、無線通信技術を組み合わせ、インプロセスで加工状態を診断できるツールおよび加工状態をもとにフィードバック制御を行うシステムを開発した。本稿では、その有効性について解説する。

<HOT Topics>
リチウム電池用集電体一体型アルミ負極の開発:合金化に伴う巨大体積歪みをどのように回避するか

リチウムイオン蓄電池の需要が拡大している中、高い容量を有する合金系負極材料(Si、Sn、Al)の実用化が期待されている。しかし、これらの材料はリチウム合金化に伴って、体積が数倍に膨張し、その体積歪に起因する構造劣化により、サイクル特性を維持することが難しい。本稿では、合金系負極材料の研究現状を説明し、著者らが冶金学などのアプローチを用いて、巨大体積歪の回避に成功し、一体型アルミニウム負極を実現した研究を紹介する。

<HOT Topics>
2050年までの市町村別乗用車CO₂排出量の将来推計と要因分析

運輸部門でも温室効果ガスの大幅削減が求められており、政府と自動車産業は各種対策を講じているが、長期排出見通しは不明確である。本稿は市町村別に2050年までの乗用車からのCO2排出削減量を推計した。その結果、全国で2010年比64-70%の削減が見込まれたが、対策効果は地域で異なることを示した。

<HOT Topics>
タクシーによる貨客混載システムの導入可能性に関する数理計画モデル

人口減少と少子高齢化が進んでいる地域の公共交通として、旅客を運送するのみならず、貨物も兼業・複合的に配送する貨客混載システムに注目が集まっている。そこで、タクシー事業者がこのシステムを運用する場面に着目し、その導入可能性を客観的に検討するための数理計画モデルを示すとともに、その適用例を紹介する。

<HOT Topics>
燃料噴霧シミュレーションを活用したインジェクタ開発

インジェクタの高性能化の要求に伴い、インジェクタ開発において燃料噴霧シミュレーションは必須の技術になっている。本稿では開発の課題である燃料の微粒化や、インジェクタ先端への燃料付着の低減、噴霧形状の制御、エンジン燃焼の最適化に関して、解析技術の構築とその活用例について紹介する。

<HOT Topics>
燃焼ガス中に含まれる水蒸気の1.1μm以下の二波長帯の近赤外放射を用いた温度測定法とその応用

温度は燃焼状態を表す重要な状態量である。一般的に使用されている温度測定法や火炎からの放射についての概説の後、水蒸気の二波長帯における近赤外放射を用いた温度測定法の原理を示す。また、本測定法をバーナ火炎、急速圧縮機を用いた火花点火、およびモデルエンジンからのプルーム測定への応用について説明する。

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