試作と実験をしない仮想自動車開発へ
Virtual car development goes without prototype testing

今後ますます進化が求められる自動車開発において、これらを支えるデジタル開発の注目技術を紹介します。従来の試作・試験による検証では、時間・人員共に対応できない状況となり、各段階における自動車開発を机上により行い、多方面の性能を並行して検証する「デジタル開発」の進化が著しい。本号では「試作と実験をしない自動車開発」を行うための最新情報を紹介し、自動車に携わる読者の知見となれば幸いです。

このページについて

  • 本ページでは、会誌特集記事の抄録をご覧になれます。
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MBDを深化させる「SURIAWASE2.0」の取り組み

経済産業省では自動車産業の国際競争力を高める為「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」を設置し、サプライチェーン全体でMBDを用いた擦り合わせの高度化を実現するために必要な取組みを検討してきた。本稿はモデルベース開発の推進に向けた政策をご紹介させていただく。

モデルベース開発と制御と人工知能

モデルベース開発(MBD)と人工知能(AI)の関係を制御工学の視点から解説する。特に、制御工学と人工知能の類似性と相違点について、それらの歴史を振り返ることによって説明する。また、それぞれの分野の主要なトピックス、たとえば、制御のシステム同定とAIの機械学習、制御のPID制御とAIの強化学習を用いて説明する。モデルベース開発を自動車に適用する場合、制御工学とAIの長所を融合することが望ましいことを述べる。

最適化CFD技術総論─最適化という言葉から生じる誤解あれこれ

様々な業種・分野で最適化ツールを用いた最適化設計が行われているが、ツールに任せてしまう事により、人が考えなくなると懸念される場合がある。本内容ではこれら最適化に関する誤解について取り上げることにより、最適化の考え方について述べる。

製品開発プロジェクトにおける外部経営環境の変化を考慮した意思決定支援

製品開発における常に変化し続ける外部経営環境の変化に対して、その要因を網羅的に抽出し、重要度を判断し、意思決定ポイントごとに組み合わせて、リスクヘッジ策を導出する手法を構築した。自動外壁修繕装置の設計を題材に適用することで、その有効性を示した。

自動車開発でのモデル流通と標準─モデル再利用性を保証する国際標準によるモデリング─

MBDの実用化のためには、互換性を確保したモデル開発・流通が重要であり、そのためには標準が必要となる。国際標準記述によるモデル開発技術部門委員会では国際標準記述(VHDL-AMS)を中心とするモデル開発・流通に関する取組を行ってきた。同委員会のものづくりの活性化と開発効率の向上を目指した活動内容について総説する。

FM(I Functional Mockup Interface)によるモデル流通を目指して

モデリングツールによらないモデル接続・交換の共通仕様として、FMI(Functional Mockup Interface)が2008年よりEUプロジェクトMODELISARで開発された。MODELISARプロジェクトが終了した2011年以降、FMIはModelica協会のプロジェクトとして、継続されている。日本では、2014年以降、自動車技術会のワーキンググループ(WG)活動として、FMIによるモデル接続・流通に関する活動が行われてきた。本解説では、自動車制御とモデル研究部門委員会FMI活用・展開検討WGにおける活動の目的、方向性、達成成果などについて紹介する。

大規模多目的最適化へのアプローチ─「最適値=実用解」の誤解

多目的進化アルゴリズムを使った多目的設計最適化について解説する。また、実問題への適用事例としてロケットエンジン用ターボポンプのタービン翼形状最適化を紹介する。実設計問題では多目的最適化手法を用いて多数のパレート最適解を獲得し、それを分析することで設計者に役立つ知見を抽出することが大切である。

データマイニングとは何か?─その実像と現状

本解説では、はじめにビッグデータの性質を述べ、それ解析するための技術としてのデータマイニングの役割や特徴、既存解析技術との違い、一般的解析手順について説明する。その後、市場製造品質管理や個別化医療など、データマイニングが社会において使われる具体例の概要を紹介する。

Software 2.0とその社会的課題

深層学習の発展によって、プログラマが仕様をコードに翻訳する従来のソフトウェアではなく、仕様を満たすシステムをコンピュータが膨大な空間から探索する「Software 2.0」が注目されることとなった。この現状について概括し、特にその社会的課題と解決の道筋について議論する。

AIによるMBDシミュレーションモデルの品質改善への取組み─ディープラーニングによる時系列データ分析の紹介─

MBDによる制御開発において、1Dシミュレーションは応用性が高い事から、その需要増による人材不足が懸念される。そこで、この問題の解決にAIの適用を試みた。その結果、初級技術者の計算結果をAIに評価させることにより、非現実的な挙動を見つける事ができ、1Dシミュレーションモデルの精度向上の可能性が確認された。

<HOT Topics>
高度な環境調和性と高級漆器調の美しさを併せ持つセルロース系高機能バイオ素材NeCycle

カーボンニュートラル、脱炭素に寄与する素材として、高機能バイオ素材NeCycleを開発、量産開始した。地上で最も豊富な非食用の植物資源であるセルロースを原料とし、伝統工芸の高級漆器の美しい漆黒とともに優れた耐久性や量産性を両立した。本素材が有する高度な環境調和性と伝統工芸の装飾性について紹介する。

<HOT Topics>
リチウムイオン電池の内部短絡試験の新規手法開発

リチウムイオン電池は、電池内部で導電性異物による短絡が発生した際の安全性を確認することが重要である。現在の強制内部短絡試験方法は、電池を解体した上で微小金属片を電極内部へ組み込む必要があるため、専門知識と技術が必要であった。そこで、電池の解体が不要な簡便な内部短絡試験手法を開発した。

<HOT Topics>
国際標準言語を用いたEV車キャビン熱モデルの開発

本研究では、 EV車の冬季暖房使用時の航続距離低下をテーマに、モデル流通による協業開発に取り組んだ。国際標準言語VHDL-AMSを用いて、EV車両モデルをOEM にて作成、さらにキャビン熱モデルをサプライヤーにて作成し、暖房使用時の航続距離への影響を協業で作成した両モデルの統合により検討した。

<HOT Topics>
流体─振動─音響の連成解析による自動車床下空力騒音の伝達メカニズム調査

静かな車内を実現するためには空力騒音の低減が重要であり、特に車体床下の空力騒音は主に中周波数帯域に寄与する。この中周波数帯域の空力騒音レベルは国産車の弱点と認識されている。本報では、流体-振動-音響の連成解析による床下空力騒音の伝達メカニズム解明と低減検討について紹介する。

<HOT Topics>
高齢者や軽度認知障害有病者の特性に配慮した高速道路逆走対策の取組み

日本では高速道路逆走事案が年間約200件発生しており、うち約7割が高齢運転者により引き起こされていることが報告されている。本報では、高速道路逆走における国内外の現状と研究動向、著者らが健常高齢者とMCI有病者を対象に実施してきた一連の実験とそれにより得られた知見を紹介し、今後の課題についてまとめる。

<HOT Topics>
Autoware Toolbox:ROSに基づく自動運転システムとMATLAB/Simulinkの連携フレームワーク

本研究では、ROSに基づく自動運転システムと連携できる、MATLAB/Simulinkベンチマークを開発した。提供ベンチマークを参考に自動運転システムを開発することで、自動車業界のメイン開発ソフトウェアであるMATLAB/Simulinkをそのまま使用でき、さらに、ROSの利点も活かすことができる。

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