未来社会を共創する自動車技術
Automotive Technology to Co-Create the Future Society
自動車は100年に一度の大変革期と言われていますが、自動車技術は、気候変動、とまらない過疎化、少子高齢化などの様々な社会問題の解決も求められています。CASEに象徴されるように,技術革新が進む自動車の技術が,自動車業界のみに閉じることなく、様々なステークスホルダーと協働して、快適で豊かな社会の共創につなげることが大切です。 自動車を社会システムとして捉え、社会課題の解決につながる活動をされている方を中心にまとめた特集号です。本号によって、自動車はどのように人類の未来に貢献できるのかを考える契機になれば、幸いです。是非ご覧ください。
このページについて
- 本ページでは、会誌特集記事の抄録をご覧になれます。
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人と物の移動のフューチャー・デザインを目指して
私たちは、炭素、窒素などの循環を破壊し、以前の状態には戻れない。このような失敗の背後にある科学、民主制、市場は将来を見る目をもたない。そこで将来を見る目の開発をめざすフューチャー・デザインの現状を概観すると共に、ひとやものの移動について、本誌の読者の皆さんがフューチャー・デザインすることを提案する。
水素社会の実現に向けたトヨタの取り組み
カーボンニュートラルの実現を目指し、水素を活用した様々な取り組みが広がっている。本稿では水素社会に向けて、トヨタが進めてきたFCシステムの開発と、現在多くのステークホルダーの皆様と進める水素を活用した取り組みについて紹介する。
2050年カーボンニュートラル実現に向けた日産の取組み
クルマのライフサイクル全体を包含するカーボンニュートラル達成に向け、日産自動車が取り組む脱炭素関連の研究開発やEVを活用したエネルギーマネージメントや車載バッテリーの2次利用など、クルマを軸とした循環社会構築に向けた包括的な取り組み、及びカーボンニュートラル社会実現に向けた課題認識について述べる。
自動運転モビリティサービスで描く未来社会
日本の急激な少子高齢化に伴い、様々な移動に関する社会課題が顕在化してきている。その課題解決と人と街の活性化を目指して、自動運転モビリティサービスの実現へのHonda Mobility Solutionsの取組みを紹介する。
地域資源とイノベーションエコシステム
地域において社会変革を起こすためにはマクロな分析に基づくミクロな設計が不可欠となる。本稿では、地域の持続性に向けた課題と地域資源について議論する。特に、再エネ関連の技術システム開発や導入の状況を踏まえ、地域で選択できるオプションの生成と、交通システムの関係性について考察する。
オンデマンド交通システムの社会実装
事例を交えながら、従来型の公共交通サービスとオンデマンド交通サービスの組み合わせにより特性の異なる広範な地域を対象としたモビリティサービスを検討するアプローチを紹介する。
「空飛ぶクルマ」は私たちの幸福(ウェルビーイング)に資する移動手段となることができるのか?
「空飛ぶクルマ」の社会実装においては、より高頻度・高密度の利用を視野に入れた社会受容性に関する根本的検討が不足している。「倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)」および「責任ある研究とイノベーション(RRI)」に基づく検討を通じて初めて、空飛ぶクルマは私たちの幸福(ウェルビーイング)に資する移動手段となる。
未来のハイウェイ─次世代道路インフラ情報プラットフォーム
本稿では、ICT技術等の活用によりインフラのマネジメントを効率化する、インフラデータプラットフォームについて紹介する。また、当該プラットフォームを拡張することによりコネクティッドな世界を実現し、スマートシティを支援する「次世代道路インフラ情報プラットフォーム(Road IaaS)」について提案する。
都市計画から考える自動運転社会
人口減少社会において都市の人口密度低下は生活に不可欠なサービスの撤退をもたらし、地域で暮らし続けることを困難にしている。どのような価値観を選択し、いかなるライフスタイルの実現を目指すのか、都市ごとに目指すビジョンの選択に迫られている。自動運転技術はビジョン実現のために何ができるのであろうか?
<HOT Topics>エンジン実動時におけるクランクシャフト挙動が及ぼすシリンダブロックの振動特性と油膜形成との関連性
計算と実計測により自動車用エンジンのクランクシャフト挙動により引き起こされるシリンダブロック振動を調査した。その結果、シリンダブロック振動とクランクシャフトの移動加速度には相関があることがわかった。この相関性は油膜厚さで整理でき、油膜厚さが閾値を下回るとシリンダブロックに励起される。
<HOT Topics>機械学習を用いたロードノイズ予測手法およびメカニズム解明支援技術の開発
NVH性能改善のための設計支援を目的とし、車体各部品の特性と現象を示す中間変数とロードノイズ性能の関係性を可視化する研究をしている。今回、機械学習によるサロゲートモデル構築と重要因子連鎖構造の可視化により、メカニズム解明と設計指針導出を支援するデータ分析プロセスを実現したため報告する。
<HOT Topics>室温廃熱を回収するための新規熱電変換材料の開発
未利用熱エネルギーの有効利用は重要な課題であるが、未利用熱の多くは200℃未満であり、既存技術では回収が難しい。熱電変換技術は、このような低品位な熱の回収に優位性をもっている。本稿では、熱電変換技術の特徴と応用、さらに最近著者らが開発した200℃未満の温度域で高い熱電性能を示す新材料についての研究を紹介する。
<HOT Topics>気候変動と大気質の関係─日本の大気質に対する気候変動の影響
東アジアでは、今後、気候変動による大気質への影響が重要になる。地表気温と地表オゾン濃度の間には明瞭な正の相関(オゾン気候罰則)があり、日本では夏季に相関が高く、長期変化は明瞭でない。将来の温暖化によって、日本の地表オゾンが無視できない程度に増加する可能性が、数値モデル実験によりが示された。
<HOT Topics>自動運転時の制動に関する心理評価の傾向分析(第1報)─クラスタ分析による類型化の有効性─
本研究では、制動の快適性について検討を行った。まず、評価グリッド法による評価要因の抽出を行った。そして、SD法アンケート実験を行い、制動の嗜好性について調査を行った。さらに、制動パターンの変化が快適性に与える影響について検討し、制動の嗜好性について複数グループに分類し、類型化の有効性について示した。
<HOT Topics>カーボンニュートラル社会実現に向けたグリーン・トランスフォーメーション─ゼロカーボンエネルギー研究所の取組み
東京工業大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所はゼロカーボンエネルギーを用いた技術によるカーボンニュートラル社会への貢献を目的に設置された。本所のグリーン社会ビジョンを示し、その実現のためのグリーン・トランスフォーメーション技術への取組を示す。