今更聞けない「ねじ」の話
”ねじ“は身近なモノであり、今日クルマをはじめとする工業製品の多くが大量生産できるのも、この“ねじ”のおかげともいえる。本報は、「今更聞けないねじの話」と題し、“ねじ”の歴史、“ねじの種類”、“ねじ各部の主な名称と働き”、及び“ねじ締結設計のポイント”について述べる。
ねじ締結技術の現状─技術課題と動向
ねじは長い歴史を持った機械要素であるにもかかわらず、今日でも締付け不良、ゆるみ、強度不足などのトラブルが後を絶たない。それは、ねじがその形状から本質的に強度上の問題・ゆるみの問題などを持っていたからであろう。本稿では、ねじのゆるみや破損の原因およびその防止法などについて現状の課題と動向を述べる。
締結用ねじ部品の標準化─品質保証の仕組みと今後の展開
我々は、さまざまな種類の締結用ねじ部品を簡単に手に入れることができるが、誤った部品を選択したり、誤った使用によってねじ部品が破損し、事故を招く場合がある。それを防止するためには、ねじの使用者が規格で規定されるそれぞれのねじ部品の品質を理解しなければならない。本稿は、安全なねじ締結を実現するために必要な締結用ねじ部品の品質保証体系及び将来の改善課題について概説している。
耐遅れ破壊特性に優れた超高強度フェールセーフボルトの創製
引張強さが1.8 GPa以上のボルトを実現するには、水素に起因した遅れ破壊の克服だけでなく、ボルトへの成形技術の確立も不可欠となる。本稿では、焼戻マルテンサイト組織を有する調質鋼の温間加工という新規プロセスの開発で実現した超高強度フェールセーフボルトの金属組織設計および耐遅れ破壊特性を紹介する。
タップを用いためねじ加工と最近の動向
めねじ加工で主に用いられるタップは、ドリルで加工された下穴の内面に与えられた回転運動により定められたリードに沿ってめねじを加工する工具である。そのため、めねじを加工する食付き部とリードに沿って工具が進むための自己ガイド機構を備えた完全ねじ山部からなるが、下穴の影響を受けることや、1回転1リード送られなければならない等、他の穴加工工具とは異なる面がある。タップには切り屑を出す切削タップと塑性加工でねじを生成するロールタップの2種類がある。
ねじ製造における塑性加工解析のための塑性力学
ボルトおよびおねじ部品の製造における線材の冷間引抜き力およびねじ転造時の転造力を、微小要素の力の釣合いに基づくスラブ法で解析する手法を示している。次いで、すべり線場とエネルギー法を用いてくさび形工具の押込み力を解析する手法を示すとともに、圧造時の軸押出し力を上界法で解析する手法を示している。
ねじ締結体の力学と強度設計
ねじ締結体は、分解・再組み立てが可能なこと、小さな力で大きな締結力が得られることなど、多くの利点を有し、機械要素としては最も古から、広く使用されている。しかしあまりにも身近なゆえに、軽んじられている風潮もある。本稿では、ねじ締結体の力学解析の基本と、それに準拠したCAE解析技術に関して概説する。
界面の力学に基づいたねじ締結部の剛性シミュレーション
車体のマルチマテリアル化における主要な接合方法の一つであるねじ締結は外力を軸部で支えるために高い接合強度を有するが、動的な剛性は締付力と部材の表面性状によって変化する。本稿ではねじ締結部の剛性変化を再現する有限要素シミュレーションの基礎理論、検証実験、モデル簡略化への取り組みについて述べる。
信頼限界楕円法によるボルトの締付けトルクおよび初期締付け力分布の改善
ボルト締結は高い締付け力が必要である。締付け力はバラツキ菱形状に分布すると考えられていた。トルク法で締付けられたボルトの等価応力を確立統計的な分布として扱うと、締付けトルクと等価応力係数は、楕円状に分布することを導いた。この結果、小さなバラツキでより高い締付けトルクと初期締付力を得ることができた。
ボルト締結体の締付け軸力の直接管理
ボルト締結体における疲労破壊とゆるみは締付け軸力に大きく依存する。したがって、ボルト締結体の信頼性を確保するためには、締付け軸力を正確に管理することが最も重要である。本稿では、これまでに著者らが提案したボルト・ナット締結体の締付け軸力検出法と、その原理を応用した締付け法について紹介する。
反射超音波パルスによるボルトの緩み診断
ボルトの緩みの診断はボルト締結の運用における普遍的な課題である。本稿では、従来ある種々のボルト緩み診断手法を概観したのち、ねじ山へ投射した超音波パルスの反射波を利用した提案手法を紹介する。実験とシミュレーションを通して、緩みによるねじ山の接触状態の変化が反射波の瞬時振動数に現れることを述べる。
ねじ締結体の事故分析
ねじ締結体は非常に優れた機械要素であり、自動車にも数多く使用されている。ねじ締結体の異常の発生は重大事故に繋がる恐れもあり対策が必要である。本稿では、事故防止への活用を目的として、自動車に使用されているねじ締結体で発生した異常を紹介する。
<HOT Topics>CVTオイルポンプ音を題材とした因果探索手法の開発
CVT構造が複雑化する中、計測データ量がますます膨大となり、オイルポンプ音の起振源や伝達経路の特定が困難になっている。そこで、短時間で確度が高い要因分析を行うため、統計的因果探索手法LiNGAMを用い、分析の効率化を図る。本稿は、自動車開発特有の時系列・多点計測データへの活用方法を中心に紹介する。
<HOT Topics>Isogeometric解析の車体構造への適用
本稿ではIGAを車体構造に適用した事例を紹介する。まず、NURBSを用いたIGAの概要とNURBSの課題を克服するためのモデリング方法について簡単に紹介する。次に、衝撃・構造解析ソフトAnsys LS-DYNAに実装されているIGA機能を用いて実施した数値解析例を紹介し、FEAに対するIGAの優位性を解説する。
<HOT Topics>高伝熱SiC ハニカムを用いた小型排熱回収器の非回収性能改良
開発中の高伝熱SiCハニカムを用いた小型排熱回収器について、バイパスモードにおける非回収性能の改良検討を行った。熱流体解析により、SiCハニカムへのガス流入を低減できるようなバイパス管構造の最適設計を行った結果、ベンチマークとしているメタル市販品よりも優れた非回収性能を試作品評価にて確認した。
<HOT Topics>スリット式防波堤を利用した分散型波力発電システムの開発
日本は長大な海岸線を有するため、波力はエネルギー源として有望である。しかし、航行船舶の安全性や漁場の維持・確保の点から、海面への大規模な装置の設置が難しい。そこで、既存の防波堤の内部に設置する発電システムを考案した。模型実験から実機スケールの出力を推定し、占有面積当たりでは従来装置を超える事を示した。
<HOT Topics>ポストコロナに訪れるモビリティの変化
コロナ禍によって生活様式や人々の意識が変わった。人との距離を保つようになり、郊外型の生活を送る人が増える。クルマは地域空間を往来する頻度が高まり、EV化の波と相まって小型車両の使用機会が増加する。クルマは個室空間として重宝されるようになり、ネット接続による変化と相まって車載コンテンツの普及が加速される。
<HOT topics>深層学習とカメラ幾何を用いた車載カメラ画像での距離推定
自動運転機能搭載車両の不具合解析には、走行シーンの把握が重要である。本稿では、シーン把握のために、低解像度の車載カメラ画像から前方対象物までの距離推定手法を提案する。提案手法では、超解像、物体検知、透視投影モデルを利用し、距離推定精度を維持しつつ、距離推定可能な対象の範囲を広げられることがわかった。