新技術と新素材による生産・製造技術

自動車業界の電動化や環境対応に向け、生産・製造現場は新素材や植物素材の新加工技術が求められています。その一方で、軽量化に向けたプレスや鋳造加工技術の進化も必要とされます。これらの加工技術は全くの新規ではなく、従来のモノづくりで培った技術の進化だと思います。また、生産・製造現場で求められる効率化は、決して現場の人を削減することではなく、人が困難なことを新技術や新手法で解決していることを示します。今回取り上げた新技術や手法はDX、AIやモデルベースです。現在のモノづくりは先人が構築した技術と新技術が柔軟に融合していることを知って頂き、本特集号によって今後の日本のモノづくりに明るい未来を感じて頂ければ幸いです。是非ご一読ください。

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日本の生産技術の今後,進むべき道

今後、日本国内で自動車の生産技術を研究するには、産学共同研究の体制、たとえば大学に社会連携講座を設置する研究体制が効果的である。また、2022年の現時点で、生産技術において大きな成果をもたらす手法は、デジタル技術、たとえばAIやIoTと、現物の物理的技術、たとえば表面や冷却とを融和したものである。

軽量化・EV化に関連した自動車部品の成形技術および材料の革新

持続可能な社会に向けて自動車の軽量化及び電動化を推進する技術開発が進められている。自動車の車体部品の軽量化のためのプレス成形技術、高出力およびコンパクトなモーターの開発のための成形技術が述べられている。また、軽量化および高強度化を狙った樹脂材料と成形技術についても言及する。

革新的薄肉軽量シリンダヘッドを実現する鋳造技術の開発

自動車業界では、車両及び生産工場のCO2 排出量削減の大きな責任がある。また内燃機関のさらなる燃焼効率向上を達成するため、シリンダヘッド内の冷却構造を複雑にかつ軽量化のための薄肉化が求められている. 本稿では、これらを実現するために開発したV-LPDC Processと関連する技術の詳細を説明する。

レーザによるCFRP等複合材料の加工

CFRP複合材料を高品質、高速度で加工するためのレーザ加工技術であるレーザ切断・穴あけ、およびレーザ接合の開発状況を説明した。超短パルスQスイッチYAGレーザを用いた切断・穴あけでは熱影響部のない高品質の加工ができた、その加工速度が遅く、この点を改善する方法としてQスイッチYAGレーザとシングルモードファイバーレーザを複合化してレーザ加工する方法を検討した。しかし、その複合化は時間差があり、よい結果が得られなかった。そこで、高速スキャナーと3kWシングルモードファイバーレーザを用いたCFRPスキャナー加工を行ったところ約100μm~200μm幅の熱影響部が生じるが板厚8mmまでのCFRP材を高速で加工できた。近年開発された高出力パルスのCO2レーザを用いた加工機についても紹介した。さらに、CFRP部材のレーザ溶接の研究についても紹介した。

試作前に品質追求や手戻りレスを実現する,DX時代に求められる組立現象のMBD化

「DXを活用し、利益確保だけでなくカーボンニュートラルを実現できますか?」。「DXを活用し、グローバルにおけるダントツ品質を実現し、市場問題をさらに一桁減らすアプローチをできますか?」「DXを活用し、個体バラツキ・デザイン意図を阻害する、隙段差の無い、世界に勝てるデザインを実現できますか?」。上記は経営課題としてご要望や課題、疑問が出やすい項目であり、それらの課題は解決できる。本稿では、試作前に品質追求や手戻りレスを実現する、DX時代に求められる組立現象のMBD化として、DXに向けた課題と重要なキーワードを用いて、品質管理部門がリード可能な「組立現象のMBD 化」や、「組立現象のMBD化」実現の方法論についての考えを述べる。

製造DXを実現するためのDXトライアングル構想の紹介

日本の製造業は改善が得意であるが、変革を実施することが苦手である。一方、すり合わせ、QC活動など組織横断の活動などは得意である。本執筆は自動車産業がDXにより、継続して競争力を保つための施策や日本人の特性や気質に合ったDX化のアプローチに関してご紹介する。

モデル低次元化による生産効率改善に向けて─HVACを例題としたAI活用とMBD/MBSEワークフロー紹介─

デジタルトランスフォーメーション(DX)において、開発現場ではより高度な仮想環境への対応が求められている。その中で、複雑化が増すシステムに対し、さらに効率的な開発手法や開発環境の整備が進められている。また、その一環として人工知能(AI)の工学分野への適用も積極的に検討されている。ここでは幅広い視点から、DXにおけるモデルベースデザイン(MBD)、モデルベースシステムエンジニアリング(MBSE)について言及し、またAI活用による生産性向上について仮想ワークフローを用いて紹介する。

生産製造におけるMBDの活用とシミュレーション高速化

生産製造における開発効率化のために、モデルを活用したデジタル開発が不可欠である。CAD 3Dモデルと1D物理モデルを連携することで、実機作成前にメカの機構・動作を組み入れたモデルベース開発が可能になる。機構と物理特性を合わせたモデリングの手法と、そのモデルを並列化して高速化する手法を説明する。

ダイカスト金型の冷却性能を変えるSKD61の積層造形

これまでSKD61ダイス鋼粉末での造形は割れやすく実用化が困難だといわれてきた、3D 造形用に成分を調整したSKD61 系粉末を使用して世界初、密度99.996~8 で造形できる割れない造形条件を確立した。本稿では、MAMS造形の応用例として、ハイブリッド造形ダイカスト金型部品での量産適用を行った事例や、ダイカスト金型における金属3D プリンティング技術活用の取組みを紹介する。

モデルベース開発におけるシミュレーション挙動を3次元映像化することの有効性

製品開発においてモデルベース開発は重要な役割に位置し、上流でのバーチャル設計を可能にしている。モデルベース開発でのシミュレーション挙動を3次元映像化することによって、高度化・複雑化したシステムの動きのイメージがしやすくなり、新たなアイデアの創出や、これまで気づけなかった課題の見える化へとつながる。

マイクロホン技術と音の可視化の最先端

音の可視化技術は、自動車開発に際し主要な騒音源への対策技術として発展、定着してきた。音の可視化に利用される、計測用マイクロホン、ペアマイクロホン法の音響インテンシティ測定、また、マイクロホンアレイを利用した近距離場音響ホログラフィ、ビームフォーミング、SONAHについて解説する。近年の音の可視化の事例としてワイドバンドホログラフィや参照信号を用いた解析、音響パワーへの応用、さらに現場吸音率測定について述べる。

DXマイスターの特徴と活用─仮想空間活用と現実空間DX化による業務改革─

製造業におけるDX活用を、現場目線から活用できるDX推進を展開「現実空間」と「仮想空間」の比較と活用で広がる業務改革。画像を中心としたデジタル化推進による工程改善。3次元に時間的概念を融合させたトレサビリティで業務の「見える化」を飛躍的に改革する「業務改善」提案活用の紹介。高画質映像を活用し画像処理で品質保障に貢献を検討。

次数低減モデルを用いたバッテリの熱マネジメント解析手法

バッテリーパックの熱マネジメントに関する予測モデル作成の手法であるLTI、LPVについてその方法論や事例を紹介する。これらは3次元のCFD解析結果をもとに熱予測モデルが作成できる手法であり、精度を維持しつつ迅速に応答するモデルが作成できるため数十分に及ぶ走行モードに相当するような過渡予測への利用が可能となる。

人工光合成技術による経済性のある水素製造

本解説では、光触媒-電解ハイブリッドシステムによる経済性のある水素製造技術および光電極を用いた水素と有用化学品の製造に関して説明する。エネルギー問題・地球温暖化という超難問の克服のために、膨大な太陽エネルギーを取り込む革新的なアイデアとともに、その解決策を生み出すヒントになるかもしれない。

交流交通の考え方に基づく,街の賑わいの醸成に寄与するモビリティの一評価方法

様々な都市でのモビリティを体験し、行政、交通事業者、街づくり協議会などとの意見交換を通して、「街の賑わい・交流の醸成に寄与すべき交通のあるべき姿」を定義し、交流交通なる造語を作った。本観点から街のモビリティを包括的にまとめるため、「気づき表」を中核に添えた手順を規定し、複数都市で実践し、評価した。

ドライブレコーダ映像を活用した各業種での業務改善の実現

富士通では、実世界のモビリティデータを収集しデジタル世界上でリアルタイムに再現し、分析・予測する事で価値を創り、実世界へのフィードバックにつなげることで様々なサービスを高度化するモビリティデジタルツインを提供している。本誌では、その一部であるドラレコ映像解析技術と当技術による価値提供例を紹介する。

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